及ゐ及ゐ、インプラントを何だと思つてゐる

唐突ですが、ウチの医院としては比較的新しいカテゴリーに入る12年経過症例。
ある偉い先生が「こんなフィクスチャーは予後が悪くて全然話にならない」と言っていたものだが、わずか10年ちょっとだけれどちゃんと経過している。
前歯のe-MAXが歯頚部でチップしていたが、着色で初期カリエスのようになっていて患者さんと笑った。OPがやや急峻になってしまう#47を残すことが、今となっては絶好のカンファレンス議題になるだろう。そして、なぜだかマルチユニットとセメンティングの混在もいかがなものか?という疑問も(笑)。前歯正中の過剰な歯間乳頭な所のソフトティッシュマネージメントも甘いんじゃないかとか(笑)。まだまだ青い、反省の自分の症例なのでした。奥深いわぁ、インプラント。












さて、本題だが。かわいい後輩から、他院で放り投げられた困った患者の写真を送ってもらった。このエリアは比較的インプラントの需要が多くそれなりの有名な先生もおられるのだ。そして、その悪魔のような内容は以前から時々聞かせてもらって、まあ、最悪なケースが山ほど出てくる。

比較的新しそうなこのケースだって、先にやらなければならないことが山盛り。口腔内の現症や歯周病は無視してインプラントだけやっつけ仕事した感じが否めない。確かにこの患者と主治医の間にどんなやり取りがあったかは定かではないが、この状況でインプラントを行う歯科医師としての神経を疑う。施術後にこうなったとしても同じだろう。口腔内写真も送ってもらったが、補綴や咬合という概念は皆無だ。仮にこの方が寝たきりだとしたら現症の受け止め方はやや違っては来るが、寝たきりの人にインプラントは埋入しないから。高度な先進医療としてのインプラントである思考回路が完全に壊れている症例だろう。

これも酷い。50歳だという。一つ一つあれこれ言うのもおこがましいくらいインプラントをなめている。この主治医は、どこから来て何処に行こうとしているのだろうか。目的が目的になり施術することが目的で施術をし、そして迷走している。どんな知識が足りないのか理解すらせず、その足りない知識で人様の人生を左右する暴挙ではないのだろうか。

私がパーフェクトだ等と言える立場ではない。医療にパーフェクトはない。だからこういう仕組みのインプラントだからうまくいくとか、こういうデザインだからダメだとかあまり言いたくはない。どんなものでも口腔という小宇宙を理解し、正しく穏やかにきちんと行えばそれなりに結果は出てくるし、数十年後の予知性も想像できる。
しかしこれらの症例は本当に頂けない。なぜならそれ以前の歯科的倫理をも含むフィロソフィーが感じられないからだ。インプラントをなめている前に、歯科というものを完全になめているのだろうか。
大都市で、こんなものが蔓延している現実を受け止めた上で社会学的切り口で歯科をとらえると、いかにも稚拙な知識とスキルが大手を振っていることにただただ驚くばかりなのだ。インプラントというオプションを選択する前に知って出来なければならないことが山のようにあるのだが。。。



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